あなたの周りにも「圧倒的な知識量を誇る人」はいませんか?

大量のインプットと深い見識を持ち、さぞかし書く本もおもしろいのだろうと期待して読んでみると、意外とそうでもない……。

平たく言えば、期待したほどおもしろくないと感じてしまうことがあります。なぜ、優秀な人が書く本が「つまらなく」なってしまうのでしょうか。

今回は、知識豊富な人ほど陥りやすい2つの落とし穴とその回避策についてお話しします。

読者は全く知らない斬新な知識を求めていない

読者は全く知らない斬新な知識を求めていない

1つ目の罠は、書き手の言いたいことが先行し、読み手の気持ちを無視してしまうことです。

実は、読者はそれほど全く知らない斬新な知識を求めてはいません。むしろ「ちょっと知っている」くらいの状態が、一番おもしろいと感じるのです。

  • ドーパミンの正体: 脳が本当の快楽を感じるのは、「今までなんとなく知っていたことが、ハッキリと分かったとき」です。既存の神経伝達経路が新しい場所とつながった瞬間、快楽物質であるドーパミンが分泌されます。
  • 未知はストレス: 逆に、全く知らないことをゼロから覚えなければならない状況は、脳にとって基本的にはストレスになります。

書き手が優秀であればあるほど、斬新な知識を詰め込みがちですが、それは読者を疲れさせ、本をつまらなくさせる原因になります。

商業出版において、相手の気持ちになることは、道徳ではなく技術なのです。

知識だけを書いていて、感情をゆさぶる要素が少ない

知識だけを書いていて、感情をゆさぶる要素が少ない

2つ目の罠は、知識の羅列に終始し、感情を動かす要素を排除してしまうことです。

「歴史の教科書」「歴史小説」、どちらがおもしろいかは明白ですよね。無味乾燥な事実よりも、感情を揺さぶるエピソードが心に刺さるのは当然です。

しかし、これが自分の本となると、なかなか実践できません。なぜなら、自分のカッコ悪い部分は隠しておきたいという人情が働くからです。

わざわざ自分の失敗談をさらけ出し、自分の名前で世に公開することに抵抗を感じない人はいないでしょう。

行動経済学からの視点

ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンの研究によれば、人の心はポジティブなこと(成功談)よりも、ネガティブなこと(失敗談や損失)に対してより強く反応することが明らかになっています。

ちょっとカッコつけた、知識だけの本は、この心理的メカニズムを活かせていないため、読者の心に響かないのです。

「隠しておきたいこと」こそが、読者の支持を集める

「隠しておきたいこと」こそが、読者の支持を集める

知識豊富な優秀な人が「つまらない本」を書いてしまう落とし穴を避けるには、以下の2点を意識してみてください。

  • 「相手が知っていること」を起点にする: 読者の既存の知識と、あなたの深い見識がつながるように橋を架ける。
  • 「失敗談」を出し惜しみしない: 隠しておきたいようなネガティブなエピソードこそが、読者の感情を揺さぶり、深い共感と信頼を生みます。

カッコいい成功法則を語る以上に、あなたの人間味がにじみ出る失敗の記録こそが、読者にとっては最高おもしろいコンテンツになるのです。

つまらない本にならないために

今回は、「圧倒的な知識量を誇る優秀な人が、意外とつまらない本を書いてしまう理由」をご紹介してきました。

あなたはこうした落とし穴に落ちることなく、読者の気持ちを想像しながら、隠しておきたい失敗談こそ書いてください。

今よりもさらに、「おもしろい!」と多くの読者から共感され、支持される著者になること請け合いですよ。