書店で平積みされているベストセラーを手に取ると、ある共通点に気づきます。

それは、専門知識がまったくない読者でも、「これなら自分にもできそうだ」と直感できるほどハードルが低いということです。

世の中のどんな業界でも、プロが占める割合はわずか1%。残りの「8割以上は素人(初心者)」だと言われています。商業出版において、この圧倒的多数派に向けてどれだけ歩み寄れるかは、売れるための必須条件です。

今回は、著者が勝ち抜くべき「親切競争」についてお話しします。

著者の凄さではなく「ハードルの低さ」で競う

「商業出版のハードルは高い」という誤解

商業出版で本を出すとなると、つい「すごい内容を書きたい」「高度なノウハウをアピールしたい」と肩に力が入ってしまいがちです。

しかし、この考え方では、あなたの著者としてのポテンシャルは半分も発揮されません。

なぜなら、大多数の読者はすごい内容にはついていけず、一方で著者の自慢には非常に敏感だからです。

  • 読者が求めているもの: 高度な理論ではなく、身近な問題の解決。
  • 売れる本がしていること: プロから見れば当たり前のようなことを、いかにやさしく、親しみやすく、再現させてあげられるかの工夫。

例えば、ある大ヒットしたビジネス書は、冒頭で「ビジネススキルではなく、身近な人間関係を良くする本です」と宣言し、読者の心理的ハードルを劇的に下げています。

競うべきはノウハウの高度さではなく、ハードルの低さなのです。

ベテラン著者への「最短距離」は、自分の実績を忘れること

ベテラン著者への「最短距離」は、自分の実績を忘れること

書店やAmazonを見ていると、実績のあるベテラン著者が目立ちます。「実績のない自分には無理だ」と感じる人もいるでしょう。

しかし、その心配は無用です。読者は、「著者が有名かどうか」よりも「自分にとってどんなメリットがあるか」にしか関心がありません。

ベテラン著者にも必ず最初の一冊がありました。彼らが今のポジションを築けたのは、読者に「これは私のための本だ!」と思わせる圧倒的な親切心があったからです。

著者としてのポジションは二の次。まずは読者の身になって、より分かりやすく、より悩みを解決してあげること。これが、結果としてベストセラー著者への最短距離となります。

「親切な本」は必ずいい本になる

「親切な本」は必ずいい本になる

私が提唱しているのは、読者に親切な本は、必ずいい本であるという法則です。これには2つの理由があります。

  1. ニーズの押し売りにならない:親切であるためには、まず相手が何を求めているかを知る必要があります。必然的に、著者の言いたいことではなく「読者が求めていること」を伝える本になります。
  2. 専門用語を「翻訳」している:専門用語で逃げず、まわりくどくても丁寧な説明を尽くす。この「面倒くさい作業」をいとわない姿勢が、読み手の深い納得感を生みます。

こうした書き手の親切な動機は、行間から必ず読者に伝わります。それが好意となり、ファン化や口コミへと繋がっていくのです。

「うわべの親切」は出版社に見抜かれる

「うわべの親切」は出版社に見抜かれる

よくある失敗が、タイトルだけ「サルでもわかる」「世界一やさしい」と親切そうに見せて、中身を開くと専門用語が並んでいるケースです。

これでは、見た目と中身が一致せず、読者は裏切られた気持ちになります。当然、プロの編集者はそのズレを瞬時に見抜くため、企画が通ることはありません。

  • テクニックは後回し: 売れるタイトルの付け方を学ぶよりも、読者に貢献するマインドセットを持つこと。
  • 考え方こそが土台: 「素人の読者に、本当に親切にすること」を真剣に考える。

最初はタイトルの完成度がゼロでも構いません。土台となる徹底した読者目線さえあれば、企画は後からいくらでも魅力的に磨き上げることができます。

親切競争に参加しよう

商業出版で大事なのは、自分のことはさておき、読者のことを考えること。

それが遠回りのようでいて、ベテラン著者・ベストセラー著者への最短距離になります。

親切という考え方は理解できても、実際に行なうことはなかなか難しいですが、そこを超えることが、あなたの著者としての可能性を広げていくはずです。