「本を一冊書き上げるには、どれくらいの文字数が必要ですか?」

これは、初めて出版を目指す方から非常によくいただく質問です。

原稿用紙に換算すると途方もない量に思えて、書き始める前から圧倒されてしまう方もいらっしゃいますが、実は商業出版における「適切な長さ」には明確な基準があります。

今回は、読者に喜ばれ、かつ出版社にとっても「出しやすい」本のボリュームについてお伝えします。

標準的なビジネス書・実用書のボリューム

標準的なビジネス書・実用書のボリューム

現在の日本の出版市場において、一般的なビジネス書や実用書の標準的なボリュームは以下の通りです。

  • 文字数:8万字 〜 12万字
  • ページ数:200ページ 〜 240ページ前後

もちろんジャンルや構成によって前後しますが、多くの編集者が「一冊の本」としてパッケージする際に目安にするのが、この「10万文字」という数字です。

なぜ「10万文字」なのか?

これには「読者の読書体験」と「本の価格」のバランスが関係しています。

  • 読書体験: 多忙なビジネスパーソンが、2〜3時間程度で読み終えることができ、「あぁ、ためになった」と満足感を得られるちょうど良い分量です。
  • 物理的な厚み: 書店に並んだ際、ある程度の厚みがないと存在感が弱まってしまいます。逆に厚すぎると、価格が上がり、読者が手に取るハードルが高くなってしまいます。

文字数よりも大切な「構成」の視点

本作りで文字数よりも大切な「構成」の視点

「10万文字も書けない!」と不安になる必要はありません。

実は、白紙の状態から10万文字を埋めるのではなく、「章立て」から逆算するのが本の書き方です。

標準的な構成の例

  • はじめに / おわりに: 各2,000〜3,000字
  • 全5章構成の場合: 1つの章につき約1.5万〜2万字
  • 1つの章の中に小見出しが5〜6個: 1つの項目につき約2,500〜3,000字

こうして分解してみると、一つひとつの項目はそこまで長い分量でないことがわかります。

大切なのは「長く書くこと」ではなく、「読者が求める情報を、過不足なく整理すること」です。

近年のトレンドは「薄くて濃い」本

近年のトレンドは「薄くて濃い」本

最近では、スマートフォンの普及により人々の集中力が短くなっている傾向があります。

そのため、あえて文字数を抑え、図解を増やしたり、1ページの文字密度を下げたりして「一気に読める」ことを売りにする本も増えています。

  • 情報密度を上げる: 無駄なエピソードを削ぎ落とし、エッセンスを凝縮する。
  • 読みやすさを重視: 難しい専門用語を避け、改行や余白を活かしたレイアウトにする。

「長い本=価値がある」というわけではありません。今の読者が求めているのは、「最短の時間で、最大の変化を得られる本」なのです。

読者目線で本を作る

本の長さを決めるのは、著者ではなく「読者の集中力」です。

無理に文章を水増しして長くする必要はありません。むしろ、伝えたいメッセージを研ぎ澄ませた結果、もし標準的な本よりも短くなったとしても、それが読者にとって最高の体験であれば問題ありません。

まずは「何文字書くか」という数字を気にしすぎず、「読者が最後まで飽きずに読み通せるか?」という視点で、あなたのノウハウを整理してみてください。